「わたしもあなたを罪に定めない」   06.04.09
                          ヨハネ8:1〜11

 一人の女の人が、姦通の罪の現場で捕らえられて、神殿に
いるイエスさまの所に連れてこられました。その女の人の周りを、
多くの人々が取り囲んでいます。
 その人に向けられている民衆のまなざしは、厳しいもので
ありました。
 姦通は、石を投げつけられて殺されるほどの重大な罪でした。
 神さまのことを軽んじ、ユダヤの社会を乱す、とんでもない女だと
みなされ、刺し貫くようなまなざしが向けられていたことでしょう。
 自分の犯した罪が原因ではありますが、そのようなまなざしに
晒されて、この人は、痛くて耐えられないような思いになっていたに
違いありません。
 この人を引っ張り出してきた律法学者たちは、どのようなまなざしを
向けていたのでしょう。その人たちにとって、この女の人はイエスさまを
陥れるための道具のような存在にすぎません。民衆よりもずっと冷たい
まなざしが向けられていたでしょう。石で打ち殺されることになっても、
それを免れることになっても、どちらでも構わないのです。
 人間としてみていないのですから、その存在は大変軽いものでしか
ありません。
 その女の人の周りには、主イエスもおられました。主は、「罪を犯した
ことのない者が、まず、この女に石を投げなさい」とおっしゃいました。
 石を投げるなとおっしゃったのではありません。罪をあいまいになさる
のではありません。
 しかし、そこで石を投げる資格のある人は、だれもいなかったのです。
 そして、主イエスだけが残りました。石を投げる資格を持つ主イエスは
おっしゃいます。「わたしもあなたを罪に定めない」と。罪をあいまいに
なさらない主イエスは、この言葉を本物にするために十字架に向かわれ
ます。
 その人を罪に定めない代わりに、ご自分がその人の罪を抱えて
死なれます。
 命がけで救おうとなさる愛に満ちたまなざしが、女の人に向けられて
いました。 十字架にかかってくださった主イエスは、そのまなざしを、
わたしたち一人ひとりに向けていてくださいます。